Lascia ch'io pianga
つい最近バロック音楽を勉強し直してたらヘンデルのアリア再ブームの波が来た。
個人的に思うんだけどもヘンデルの曲ってかなり今のミュージカルに通じるところがあるんじゃないかと。
美しく、歌い手の心情を繊細に表していて、尚且つ分かりやすい!
バロック音楽の中で1番とっつきやすい気がする。
高校の音楽の先生に言われたことばですごく印象に残っているのが、「音楽は長調の時が一番悲しい」
時が経てば経つほど本当にその通りだな…!と思うことが多くて、これだから音楽って激エモ最高ジャンルだなって悶えてる。きもいね。
その中でも大大大大大好きなのが歌劇『リナルド』の中のアリア『Lascia ch'io pianga』(ラッシャキオピアンガ)!
ひらたーく言えば悪者に捕らえられたお姫様が離れた恋人を想って歌うアリアなんだけど、はちゃめちゃに美しいのよ…。
全体的には長調の雰囲気で進んでいく中での短調部分の絶望感と悲壮感がヤバイ…そしてまた最初のメロディーに戻ってきたときの悲しみと諦めと失った想い人との思い出への渇望と…色んな思いが混じり合った長調だなって思うのよ…!!
伴奏も全然凝った作りじゃなくて、基本的なコードを弾いてるんだけどもそのシンプルにたたみかけてくる2回のコードの連打が悲しみの波が迫ってくるみたいでハーーー無理。しんどい。
当時はカストラートという去勢された男性歌手が隆盛を極めた時代なのだけど、そのカストラートの中でも1番のスターだったファリネリの人生を描いた映画があって、そこにもこのアリアを歌うシーンが出てくるんだけどこれもまたしんどい…。
当時は女性が教会内で歌うことが許されていなくて、その結果ボーイ・ソプラノの声を成人してからも出せるカストラートが重宝されたんだけども、うまくいけば歌手として成功して金銭的に余裕のある生活ができることに希望を託して生まれすぎた子どもを去勢してしまうことが多くて、しかも衛生的にも良いとは言えない時代でたくさんの子どもが手術を受けても死んでしまった。
この映画の主人公のファリネリは3オクターブもの音域の超人的な声帯の持ち主だったらしくて、彼の声を聴いた女性がしばしば失神したりもしてたらしい…。
そんな彼が歌う『Lascia ch'io pianga』のシーン、めちゃめちゃ真に迫る切なさで観るたびに泣いてしまう。
この映画でのファリネリの声はソプラノ歌手とカウンターテナー(裏声で歌う男性歌手)の声をミックスして作り出してるらしくて、本当に人間離れした声と儚い美しさで、長調の静かに祈るみたいな悲しみが一層深いんです…。
もしここまで読んでくださった方がいましたらありがとうございます。
有名な作品なので観たことがある方もいるかもしれないのですが、歌劇『リナルド』と映画『カストラート』、ぜひ観てみてください。